表示速度を改善するには？PageSpeed Insightsで押さえるべきポイントを紹介

Webサイトの表示速度が遅いと、ユーザーの離脱率が高くなり、検索エンジンからの評価も下がってしまいます。特に、モバイルユーザーの増加とともに、表示速度の重要性はますます高まっています。PageSpeed Insightsは、Googleが提供するWebページのパフォーマンス計測ツールで、表示速度の改善に必要な具体的な指摘を受けることができます。

本記事では、PageSpeed Insightsの基本的な使い方から、Core Web Vitals（LCP、FID、CLS）の改善方法、さらには画像圧縮やJavaScript最適化などの具体的な施策まで、表示速度改善のために押さえるべきポイントを詳しく解説します。Webサイト運営者やSEO担当者の方が、自社サイトのパフォーマンス向上に役立てられる実践的な内容となっています。

PageSpeed Insightsの概要

PageSpeed Insightsは、Webサイトの表示速度を分析し、改善提案を行うGoogleの無料ツールです。単にページの読み込み速度を測定するだけでなく、ユーザー体験の向上とSEO対策に直結する重要な指標を提供します。

PageSpeed Insightsとは？

PageSpeed Insightsは、WebページのパフォーマンスをモバイルとPC両方で評価し、0から100のスコアで表示するツールです。このツールは実際のユーザーデータと実験室環境でのデータを組み合わせて、包括的な分析を行います。

ツールの特徴として、具体的な改善提案を「機会」と「診断」の2つのカテゴリに分けて提示する点が挙げられます。機会項目では、ファイル圧縮や画像最適化など、直接的な改善効果が期待できる施策を示し、診断項目では、アクセシビリティやベストプラクティスに関する提案を行います。

PageSpeed Insightsの結果は、検索エンジンの評価にも影響を与えます。Googleは2021年5月から、Core Web Vitalsを検索順位の要因として正式に導入しており、表示速度の改善は現在のSEO戦略において欠かせない要素となっています。

Core Web Vitalsの基本

Core Web Vitalsは、Googleが定義したWebページのユーザー体験を測定する3つの重要指標です。これらの指標は、ページの読み込み速度、応答性、視覚的安定性を総合的に評価します。

指標名	測定内容	良好な数値
LCP（Largest Contentful Paint）	最大コンテンツの描画時間	2.5秒以下
FID（First Input Delay）	初回入力遅延	100ms以下
CLS（Cumulative Layout Shift）	累積レイアウト変更	0.1以下

LCPは、ページ内で最も大きなコンテンツ要素（通常は画像やテキストブロック）が表示されるまでの時間を測定します。FIDは、ユーザーがページと最初に対話（クリックやタップ）してから、ブラウザが実際に応答するまでの時間を示します。CLSは、ページ読み込み中に発生するレイアウトの予期しない変更を数値化したものです。

フィールドデータとラボデータの違い

PageSpeed Insightsでは、フィールドデータとラボデータの2種類のデータが表示されます。フィールドデータは実際のユーザーの体験を反映し、ラボデータは制御された環境での測定結果を示します。

フィールドデータ（Chrome User Experience Report）は、過去28日間に実際のChromeユーザーがページを訪問した際の実測データです。このデータは、実際のユーザー環境での性能を反映するため、より現実的な評価を提供します。ただし、十分な訪問者数がない場合は表示されません。

ラボデータは、一定の条件下で実施される模擬テストの結果です。ネットワーク速度やデバイス性能が標準化されているため、再現性が高く、具体的な改善施策の効果を測定しやすい特徴があります。開発段階での性能確認や、改善前後の比較に適しています。

PageSpeed Insightsスコアの算出方法

PageSpeed Insightsのスコアは、複数の性能指標を重み付けして算出されます。スコアは0から100の範囲で表示され、90以上が良好、50-89が改善の余地あり、49以下が不良とされています。

スコア算出には、Core Web Vitals以外にも、FCP（First Contentful Paint）、SI（Speed Index）、TTI（Time to Interactive）などの指標が含まれます。各指標の重み付けは定期的に更新され、より重要な指標により高い重みが設定されます。

スコアは絶対的な基準ではなく、同じカテゴリの他のWebページとの相対的な比較に基づいて算出されます。このため、Web全体の性能向上に伴い、同じページでもスコアが変動する可能性があります。

PageSpeed Insightsで確認すべき指標

PageSpeed Insightsで表示される各指標を正しく理解し、効果的な改善策を実施することが重要です。特にCore Web Vitalsの3つの指標は、ユーザー体験とSEO評価に直接影響するため、優先的に対策を行う必要があります。

LCP（Largest Contentful Paint）の改善

LCPは、ページ内で最も大きなコンテンツ要素が表示されるまでの時間を測定する指標です。この指標は、ユーザーがページの主要コンテンツを確認できるまでの体感速度を表すため、ユーザー体験に大きく影響します。

LCPの改善には、まず最大コンテンツ要素を特定することが重要です。多くの場合、ヒーローイメージ、メインビジュアル、大きなテキストブロックなどが該当します。これらの要素の読み込み時間を短縮することで、LCPの改善が期待できます。

具体的な改善策として、画像の最適化、サーバーレスポンス時間の短縮、レンダリングブロックリソースの削減などが効果的です。また、重要なコンテンツを優先的に読み込む「Above the fold最適化」も、LCP改善に有効な手法です。

改善策	効果	実装難易度
画像圧縮・次世代フォーマット	高	低
サーバーレスポンス時間短縮	高	中
プリロード指定	中	低

FID（First Input Delay）とINP対策

FIDは、ユーザーがページと最初に対話してから、ブラウザが実際に応答するまでの時間を測定します。2024年3月からは、FIDに代わってINP（Interaction to Next Paint）が新しいCore Web Vitals指標として採用されています。

FIDとINPの改善には、JavaScriptの実行時間短縮が最も効果的です。メインスレッドを長時間ブロックするJavaScriptコードを特定し、分割実行や遅延読み込みを実装することで、応答性の向上を図ります。

また、未使用のJavaScriptコードの削除、第三者スクリプトの最適化、Web Workerの活用なども有効な対策です。特に、インタラクティブな要素（ボタン、フォーム、ナビゲーション）の応答性改善に焦点を当てることが重要です。

CLS（Cumulative Layout Shift）の最適化

CLSは、ページ読み込み中に発生するレイアウトの予期しない変更を数値化した指標です。レイアウトシフトは、ユーザーが意図しないクリックやタップを引き起こし、使いやすさを大幅に低下させる原因となります。

CLSの改善には、コンテンツの読み込み前に適切なスペースを確保することが重要です。画像や動画には明示的なサイズ指定を行い、フォントの読み込みによる文字化けを防ぐために、font-displayプロパティを適切に設定します。

また、動的コンテンツの挿入や広告の表示によるレイアウト変更も、CLSの悪化要因となります。これらの要素には事前に適切なスペースを確保し、ユーザーの操作に影響を与えないよう配慮することが必要です。

その他の重要指標

Core Web Vitals以外にも、PageSpeed Insightsでは複数の重要指標が表示されます。FCP（First Contentful Paint）、TTI（Time to Interactive）、SI（Speed Index）などの指標も、総合的な性能評価に影響を与えます。

FCPは、ページ内で最初のコンテンツが表示されるまでの時間を測定し、ユーザーがページの読み込み開始を認識するタイミングを示します。TTIは、ページが完全にインタラクティブになるまでの時間を表し、ユーザーが操作可能になるタイミングを測定します。

これらの指標を総合的に改善することで、ユーザー体験の向上とPageSpeed Insightsスコアの改善を実現できます。特に、ファーストビューの高速化は、複数の指標に同時に好影響を与える効果的な改善策です。

表示速度改善の具体的施策

PageSpeed Insightsで指摘される問題点に対して、具体的な改善施策を実装することが重要です。効果的な施策を優先順位に従って実施することで、表示速度の大幅な改善が期待できます。

画像最適化による改善

画像は多くのWebページで最も大きなファイルサイズを占めるため、画像最適化は表示速度改善の最も効果的な施策の一つです。適切な画像最適化により、ページの読み込み時間を大幅に短縮し、LCPの改善に直結します。

まず、画像の圧縮を行います。JPEGやPNGファイルは、画質を保ちながらファイルサイズを削減する圧縮ツールを使用します。さらに、WebPやAVIFなどの次世代フォーマットを採用することで、従来の形式と比較して30-50%のファイルサイズ削減が可能です。

遅延読み込み（Lazy Load）の実装も重要です。ファーストビューに表示されない画像の読み込みを遅延させることで、初期読み込み時間を短縮できます。HTML5のloading=”lazy”属性や、JavaScriptライブラリを使用した実装が一般的です。

手法	削減効果	ブラウザ対応
WebP形式	25-35%	広範囲対応
AVIF形式	50%以上	限定的
遅延読み込み	30-70%	全ブラウザ対応

JavaScript最適化とCSS最適化

JavaScriptとCSSの最適化は、レンダリングブロックの削減とFID改善に直接影響します。未使用のコードの削除、ファイルの圧縮、非同期読み込みの実装により、大幅な性能改善が期待できます。

JavaScriptの最適化では、まず未使用のコードを特定し削除します。Webpackなどのビルドツールを使用して、実際に使用されるコードのみを含むバンドルファイルを生成します。また、コードの分割により、必要な機能のみを段階的に読み込むことも効果的です。

CSSの最適化では、未使用CSS削除が最も効果的です。PurgeCSSなどのツールを使用して、実際に使用されるスタイルのみを残します。また、CSSの圧縮（minification）により、ファイルサイズを削減できます。

レンダリングブロックリソース削減

レンダリングブロックリソースの削減は、FCPとLCPの改善に大きく寄与します。CSSとJavaScriptのレンダリングブロックを最小限に抑えることで、ページの初期表示速度を大幅に改善できます。

CSSについては、クリティカルCSS（ファーストビューの表示に必要なスタイル）をHTMLに直接埋め込み、残りのCSSを非同期で読み込む手法が効果的です。また、media属性を使用して、必要な場面でのみCSSを読み込むことも重要です。

JavaScriptについては、async属性やdefer属性を適切に使用し、HTMLの解析をブロックしないよう設定します。また、第三者スクリプトは、可能な限り遅延読み込みを実装し、ページの初期表示に影響を与えないよう配慮します。

キャッシュ活用とCDN利用

ブラウザキャッシュの適切な設定とCDN（コンテンツ配信ネットワーク）の活用により、リピート訪問者の体験を大幅に改善できます。効果的なキャッシュ戦略により、サーバーへのリクエスト数を削減し、表示速度を向上させることができます。

ブラウザキャッシュでは、静的リソース（CSS、JavaScript、画像）に適切なキャッシュヘッダーを設定します。Cache-ControlやExpiresヘッダーを使用し、リソースタイプに応じて適切なキャッシュ期間を設定します。

CDNの活用により、地理的に分散したサーバーからコンテンツを配信できます。これにより、ユーザーに最も近いサーバーからファイルが配信され、TTFB（Time To First Byte）の改善が期待できます。

機会と診断項目の活用方法

PageSpeed Insightsの「機会」と「診断」項目を効果的に活用することで、具体的な改善優先順位を決定し、効率的な最適化を実現できます。これらの項目を正しく理解し、実装することが成功の鍵となります。

機会項目の確認と優先順位

機会項目では、実装することで直接的な改善効果が期待できる具体的な施策が提示されます。各項目には推定される改善時間が表示されるため、効果の高い施策から優先的に実装することが重要です。

代表的な機会項目として、画像の最適化、未使用のCSS削除、JavaScriptの最適化、サーバーレスポンス時間の短縮などがあります。これらの項目は、改善による時間短縮効果が大きいものから順番に表示されます。

実装の優先順位を決定する際は、改善効果の大きさ、実装の難易度、開発リソースを総合的に考慮します。まず、簡単に実装できて効果の高い施策から着手し、段階的に複雑な改善に取り組むことが効果的です。

機会項目	改善効果	実装難易度	優先度
画像の最適化	大	低	高
未使用CSS削除	中	中	中
サーバー改善	大	高	高

診断項目の改善提案

診断項目では、ベストプラクティスの観点から改善すべき点が提示されます。これらの項目は直接的な速度改善効果は少ないものの、総合的なWebサイト品質の向上に寄与します。

典型的な診断項目には、画像の適切なサイズ設定、効率的なキャッシュポリシー、テキスト圧縮の有効化、HTTPSの使用などがあります。これらの項目を改善することで、検索エンジンからの評価向上や、ユーザー体験の質的向上が期待できます。

診断項目の改善は、機会項目の対応が完了してから取り組むことが一般的です。ただし、セキュリティに関連する項目（HTTPSの使用など）は、優先的に対応することが推奨されます。

パフォーマンスプラグインの活用

WordPressなどのCMSを使用している場合、パフォーマンスプラグインの活用により、技術的な知識がなくても効果的な改善を実現できます。適切なプラグインの選択と設定により、多くの最適化施策を自動化できます。

代表的なパフォーマンスプラグインには、キャッシュ機能、画像最適化、CSS・JavaScript最適化、遅延読み込み機能などが含まれます。これらの機能を組み合わせることで、総合的な性能改善が可能です。

プラグインの選定においては、サイトの要件に適した機能を提供するものを選択することが重要です。また、複数のプラグインを同時に使用する場合は、機能の重複や競合を避けるよう注意が必要です。

継続的な表示速度管理

表示速度の改善は一度の実装で完了するものではなく、継続的な監視と改善が必要です。定期的な計測と分析により、パフォーマンスの維持と向上を図ることが重要です。

定期的な計測と監視

PageSpeed Insightsを使用した定期的な計測により、サイトの性能変化を把握できます。月1回程度の定期計測により、性能劣化の早期発見と迅速な対応が可能になります。

計測の際は、主要なページ（トップページ、人気記事、商品ページなど）を対象とし、モバイルとPC両方の環境で測定することが重要です。また、測定結果の履歴管理により、改善効果の検証や新たな問題の発見が可能になります。

自動化ツールを活用することで、継続的な監視体制を構築できます。Google Search ConsoleのCore Web Vitalsレポートや、第三者の監視サービスを併用することで、より包括的な性能管理が実現できます。

モバイル表示速度対策

モバイル端末での表示速度対策は、現在のWeb戦略において特に重要です。モバイルファーストインデックスの導入により、モバイル版の性能がSEO評価に直接影響するようになりました。

モバイル最適化では、画面サイズに応じた画像配信、タッチ操作に適したUI設計、ネットワーク速度を考慮したコンテンツ配信などが重要です。また、AMP（Accelerated Mobile Pages）対応により、モバイル環境での表示速度を大幅に改善できます。

モバイル特有の最適化として、プログレッシブWebアプリ（PWA）の実装も効果的です。PWAにより、ネイティブアプリのような高速な動作と、オフライン対応が可能になります。

サーバーレスポンス時間短縮

サーバーレスポンス時間（TTFB）の短縮は、すべての性能指標に影響を与える根本的な改善策です。効果的なサーバー最適化により、ページ全体の表示速度を底上げできます。

サーバーレスポンス時間の改善には、サーバーの性能向上、データベースの最適化、効率的なコード実行、適切なキャッシュ戦略などが必要です。また、CDNの活用により、地理的な要因による遅延を最小化できます。

ホスティング環境の見直しも重要な要素です。高性能なサーバーやSSD利用、最新のPHPバージョンへの移行などにより、大幅な改善が期待できます。

まとめ

PageSpeed Insightsを活用した表示速度改善は、現代のWebサイト運営において欠かせない要素です。Core Web Vitals（LCP、FID、CLS）の改善を中心とした総合的な最適化により、ユーザー体験の向上とSEO評価の改善を同時に実現できます。

効果的な改善には、画像最適化、JavaScript・CSS最適化、レンダリングブロックリソース削減、キャッシュ活用とCDN利用などの具体的な施策を、優先順位に従って実装することが重要です。また、継続的な監視体制の構築により、長期的な性能維持と向上が可能になります。

表示速度の改善は技術的な側面だけでなく、ビジネス成果にも直結する重要な取り組みです。本記事で紹介した手法を参考に、自社サイトの表示速度改善に取り組み、より良いユーザー体験の提供を目指してください。