CLSとは？スコア改善とSEO評価を上げるための3つの注意点

CLS（Cumulative Layout Shift）は、Googleが提唱するCore Web Vitalsの重要な指標の一つで、ページの視覚的安定性を測定する指標です。ウェブページを閲覧している際に、画像やテキストなどの要素が予期しない位置に移動してしまう現象を数値化したものがCLSスコアです。この指標は2021年のページエクスペリエンスアップデート以降、SEOランキング要因として重要視されており、ユーザーエクスペリエンスの向上とSEO評価に直結します。適切なCLS最適化により、ユーザーの離脱率低下とコンバージョン率向上が期待できるため、ウェブサイト運営者にとって無視できない要素となっています。本記事では、CLSの基本概念から具体的な改善方法まで、SEO効果を最大化するための実践的なノウハウを詳しく解説していきます。

CLSの基本概念とSEOへの影響

CLS（Cumulative Layout Shift）は、ページの読み込み中に発生する視覚的な安定性を測定するGoogle独自の指標です。この指標は、予期しないレイアウトの移動がユーザー体験に与える影響を数値化したものであり、現在のSEO評価において重要な位置を占めています。

CLSスコアの計算方法

CLSスコアは、影響度（impact fraction）と距離度（distance fraction）の積を、ページの存続期間中に発生したすべてのレイアウトシフトについて合計することで算出されます。影響度は、不安定要素がビューポートに占める割合を示し、距離度は要素が移動した距離をビューポートサイズで割った値です。

この計算により得られるスコアは0から無限大までの値を取りますが、実際のウェブサイトでは0.3を超えることは稀です。Googleが推奨する良好なスコアは0.1以下とされており、0.25以上は改善が必要とみなされます。

SEOランキングへの直接的影響

2021年6月のページエクスペリエンスアップデート実装以降、CLSはSEOランキング要因として正式に組み込まれました。Core Web Vitalsの一部としてCLSが評価されるため、スコアが悪化すると検索順位に負の影響を与える可能性があります。

ただし、CLSの影響度は他のランキング要因と比較して限定的であり、コンテンツの関連性や権威性が依然として重要な要素として機能します。それでも、競合サイトと同程度のコンテンツ品質である場合、CLSスコアの優劣が順位を左右する可能性は十分に考えられます。

ユーザー体験への影響とビジネス指標

CLSの改善は、直接的なSEO効果だけでなく、ユーザー体験の向上を通じた間接的なSEO効果も期待できます。レイアウトシフトが頻発するページでは、ユーザーが意図しないクリックをしてしまったり、読んでいる文章を見失ったりする問題が発生します。

これらの問題により、ページの滞在時間短縮や直帰率上昇といった行動指標の悪化を招き、結果として検索エンジンからの評価低下につながる可能性があります。CLSの最適化により、これらのユーザー行動指標を改善し、総合的なSEO評価向上が期待できます。

CLS測定ツールと診断方法

CLSスコアの正確な測定は、効果的な改善策を講じる上で欠かせません。Googleが提供する公式ツールから無料の測定サービスまで、様々な診断方法が存在します。ここでは、実用的な測定ツールとその活用方法について詳しく解説します。

Google公式測定ツールの活用

PageSpeed Insightsは、CLSを含むCore Web Vitalsを測定する最も信頼性の高いツールです。このツールでは、実際のユーザーデータ（フィールドデータ）と実験室データ（ラボデータ）の両方から、CLSスコアを確認できます。フィールドデータは過去28日間の実際のユーザー体験を反映し、ラボデータはページの理論的なパフォーマンスを示します。

Google Search Consoleの「ウェブに関する主な指標」レポートでは、サイト全体のCLSパフォーマンスを俯瞰できます。問題のあるページや改善が必要なページがグループ化されて表示されるため、優先的に対処すべきページの特定が容易になります。

ブラウザ開発者ツールでの詳細分析

Chrome DevToolsのPerformanceタブとLighthouseツールを組み合わせることで、CLSが発生する具体的な原因を特定できます。Performanceタブでは、ページ読み込み中のレイアウトシフトをタイムライン上で視覚的に確認でき、どの要素がいつシフトを引き起こしているかを詳細に分析できます。

Web Vitals拡張機能をブラウザにインストールすることで、リアルタイムでCLSスコアを監視することも可能です。この拡張機能は、ページ上でレイアウトシフトが発生するたびに視覚的な警告を表示し、問題箇所の特定を支援します。

測定結果の解釈と優先順位付け

測定ツールから得られたデータを正しく解釈することが、効果的な改善につながります。CLSスコアが0.1以上0.25未満の場合は「要改善」、0.25以上は「不良」として分類されますが、業界やサイトタイプによって許容範囲が異なる場合があります。

CLSスコア範囲	評価	対応優先度
0 – 0.1	良好	低
0.1 – 0.25	要改善	中
0.25以上	不良	高

測定結果を分析する際は、トラフィック量の多いページから優先的に改善することが重要です。また、コンバージョンに直結するランディングページや商品ページは、CLSスコアが中程度であっても積極的な改善を検討する価値があります。

CLSスコア改善の具体的施策

CLSスコアの改善には、レイアウトシフトの原因となる要素を特定し、適切な対策を講じることが重要です。主な原因として画像の遅延読み込み、フォントの読み込み、動的コンテンツの挿入が挙げられます。ここでは、これらの問題に対する実践的な解決策を詳しく解説します。

画像最適化によるレイアウト安定化

画像要素のwidth属性とheight属性を事前に指定することで、ブラウザが画像の読み込み前にスペースを確保し、レイアウトシフトを防止できます。HTML5のaspect-ratio CSSプロパティを使用することで、より柔軟なレスポンシブ対応も可能になります。

遅延読み込み（lazy loading）を実装する際は、loading=”lazy”属性を適切に使用し、ファーストビューの画像には適用しないよう注意が必要です。また、プレースホルダーやスケルトンローディングの実装により、コンテンツが読み込まれる前でもレイアウトの安定性を維持できます。

フォント読み込みの最適化

カスタムフォントの読み込みは、テキストの表示タイミングでレイアウトシフトを引き起こす主要因の一つです。font-display: swapプロパティを使用することで、システムフォントを先に表示し、カスタムフォントの読み込み完了後にスムーズに切り替えることができます。

preload link要素を使用したフォントの事前読み込みにより、フォントの表示タイミングを早期化し、レイアウトシフトの発生を最小限に抑制できます。また、WOFF2形式の使用や不要な文字セットの除去により、フォントファイルサイズの最適化も重要な要素となります。

動的コンテンツ挿入の制御

広告や埋め込みコンテンツなどの動的要素は、CLSスコア悪化の大きな原因となります。これらのコンテンツには、事前に適切なコンテナサイズを確保し、min-height属性を設定することで、コンテンツ読み込み前のスペース確保が可能です。

動的コンテンツ種類	推奨対策	効果レベル
広告バナー	固定サイズコンテナ設定	高
埋め込み動画	aspect-ratio指定	高
SNS埋め込み	プレースホルダー実装	中

JavaScriptによる要素の動的挿入では、transform: translateY()やtransform: scale()などのCSSトランスフォームを使用することで、レイアウトに影響を与えない方法での位置調整が可能になります。これにより、視覚的な変化を提供しながらもCLSスコアの悪化を回避できます。

CLS最適化における注意点

CLSの改善を進める際には、スコア向上だけに注目するのではなく、総合的なユーザー体験とサイトパフォーマンスのバランスを考慮することが重要です。過度な最適化は、かえって他の指標を悪化させる可能性があるため、適切な注意点を理解して取り組む必要があります。

他のCore Web Vitalsとのバランス

CLS改善施策の中には、LCP（Largest Contentful Paint）やFID（First Input Delay）に負の影響を与える可能性があるものが存在します。例えば、画像の事前サイズ指定により余白が発生し、ファーストビューのコンテンツ量が減少してLCPが悪化するケースがあります。

フォントのpreload実装は、CLSを改善する一方で、他のリソースの読み込みを遅延させる可能性があります。リソースの優先順位を適切に設定し、クリティカルパスの最適化を行うことで、全ての指標の調和を図ることが重要です。

レスポンシブデザインでの配慮事項

デバイスサイズによってCLSの発生パターンが異なるため、モバイルとデスクトップの両方で測定・検証を行う必要があります。特にモバイルデバイスでは、ビューポートサイズが小さいため、同じレイアウトシフトでもCLSスコアへの影響が大きくなる傾向があります。

CSS Grid やFlexboxを使用したレスポンシブレイアウトでは、ブレークポイント付近でのレイアウト変更が意図しないCLSを引き起こす場合があります。メディアクエリの境界値での動作確認を徹底し、滑らかな画面遷移を実現することが求められます。

過度な最適化のリスク回避

CLSスコアの完璧な0.0を目指すあまり、ユーザビリティを犠牲にしてしまうケースが見られます。例えば、すべてのコンテンツに固定サイズを設定することで、コンテンツの動的な表現力が失われ、魅力的でないウェブサイトになる可能性があります。

適切な目標設定として、Googleが推奨する0.1以下のスコア達成を目指し、それ以上の過度な最適化は避けることが重要です。また、A/Bテストを実施してCLS改善がコンバージョン率やエンゲージメントに与える実際の影響を測定し、ビジネス目標との整合性を確認することも必要です。

サードパーティスクリプトやプラグインによるCLS悪化については、機能性とパフォーマンスのトレードオフを慎重に評価する必要があります。必要性の低いスクリプトは削除し、重要な機能については代替手段や最適化方法を検討することが推奨されます。

よくある質問

CLSに関してよく寄せられる質問について、実務的な観点から詳しく解説します。これらの回答を参考に、効果的なCLS最適化を進めていただけます。

CLSスコアが0.1を超えている場合、すぐにSEO順位に影響しますか？

CLSスコアの悪化が即座にSEO順位を大幅に下げることは一般的ではありません。GoogleはCore Web Vitalsを段階的に評価しており、コンテンツの品質や関連性などの他の要因との総合的な判断となります。ただし、競合サイトと同程度のコンテンツ品質の場合、CLSスコアの差が順位に影響する可能性があるため、継続的な改善が推奨されます。

広告配信でCLSが悪化する場合、どのような対策が効果的でしょうか？

広告による CLS悪化には、事前に適切なサイズのコンテナを確保することが最も効果的です。固定サイズの広告スペースを設け、広告が読み込まれる前でもレイアウトが崩れないようにします。また、広告の遅延読み込みタイミングを調整し、ユーザーがスクロールする前に広告スペースを確保することも有効な対策となります。

モバイルでのCLSスコアがデスクトップより悪い理由は何ですか？

モバイルデバイスでは画面サイズが小さいため、同じピクセル数の移動でもビューポートに占める割合が大きくなり、結果としてCLSスコアが高くなります。また、モバイルでは通信速度が不安定になりやすく、リソースの読み込み順序が変動することでレイアウトシフトが発生しやすくなります。モバイル専用の最適化を行い、デバイス特性を考慮した設計が重要です。

WordPressサイトでCLSを改善する際の注意点はありますか？

WordPressサイトでは、テーマやプラグインがCLSに影響することが多くあります。特に画像最適化プラグインの遅延読み込み設定や、ページビルダープラグインの動的コンテンツ生成機能に注意が必要です。まず使用中のプラグインがCLSに与える影響を個別に検証し、必要に応じて設定変更や代替プラグインへの切り替えを検討することが推奨されます。

これらの質問への回答を参考に、自社サイトの状況に合わせた最適なCLS改善戦略を立てることができます。定期的な測定と段階的な改善により、持続可能なウェブサイトパフォーマンス向上を実現していきましょう。

まとめ

CLSはCore Web Vitalsの重要指標として、SEO評価とユーザー体験の両面で大きな影響を与える要素です。適切な測定ツールを活用してスコアを把握し、画像最適化やフォント読み込みの改善、動的コンテンツの制御といった具体的な施策を実施することで、効果的な改善が可能になります。

改善を進める際は、他のCore Web Vitals指標とのバランスを保ち、レスポンシブデザインでの配慮を忘れずに取り組むことが重要です。過度な最適化によるユーザビリティの低下を避け、Googleが推奨する0.1以下のスコア達成を目標とした段階的な改善を心がけましょう。

継続的な測定と改善により、CLSスコアの向上はSEO評価の向上だけでなく、ユーザーエンゲージメントやコンバージョン率の改善にもつながります。本記事で紹介した施策と注意点を参考に、効果的なCLS最適化を実践していただければと思います。